――『甘い生活』(1960)より マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni/1924-1996)―― 20世紀のイタリア俳優といえば、必ず彼の名が挙げられます。 終戦後の1945年、演劇の世界に踏み込むやいなや、ルキノ・ヴィスコンティ、フェデリコ・フェリーニなど多くの偉大な映画監督らに才能を認められ、生涯になんと約170本の映画に出演し、人気は決して衰えることがなかったと言われています。 世紀の俳優は、最もスーツの似合う男性であり、その生き方までかっこよさでみなぎっております。 本日は、彼のファッションと生き様をご紹介したいと思います。 Less is More ――監督フェデリコ・フェリーニと マストロヤンニに必要だったのは、クラシックな黒スーツ、白いシャツに黒ネクタイだけでした。 流行やブランドを見て服を選ぶことはなく、常に素朴さを大切にしていました。 『白いシャツが男にしてくれる』と語ったこともあるのだそう。 フォーマル過ぎず、カジュアル過ぎず、最近聞くようになったカジュアルシック(Casual Chic)を地で行く人だったのでしょう。 マストロヤンニの定番スーツはシングル、2ボタンにシンプルなフラップポケット。 裏地は総裏、肩パッドは軽めに。 生地、カットにこだわり、廃れないデザインを好みました。 会話は、ねちっこく、さらっと ――フランス女優アヌーク・エーメと 映画『甘い生活』にて、アヌーク・エーメと交わした会話がかっこ良すぎるので紹介します。 マストロ:こんばんは、マッダレーナ。ご機嫌いかがでしょう。お1人ですか? エーメ:ええ。 マストロ:踊りたいですか? エーメ:いいえ。 マストロ:何か飲みますか? エーメ:いいえ。今夜は何もかも裏目に出てしまうの・・・・・・もうおいとまするわ。 マストロ:お供しましょう。 かっこいいですねえ・・・・・・ しつこいのにしつこさを感じさせないのがかっこいいですねえ。 僕が実践すると「こんばんは」あたりで手錠かけられるのは確実ですけどね。 ちなみに、定番シャツは、ミディアムスプレッドカラーにフレンチカフス。 エレガントなカフスボタンと、ウールのネクタイをシンプルノットで。 廃れないこだわりを 前髪を上げ、良く櫛の入った髪型は、若い頃からずっと、生涯変わることはありませんでした。 ほら ね? (Jeanne_Moreau_Marcello_Mastroianni_1991) この定番のカットとスタイリングは、マストロヤンニの愛した「素朴さ」を最も良く代弁していると思います。 ジョージ・クルーニーもこんな感じですよね。たぶん。 ほらね!
マストロヤンニのかっこ良さには、内面の深みが染み出している、と私は思います。 青汁が、見た目によらず美味しいように・・・・・・―― 人生は色々な瞬間で彩られていて、時々笑いたくなる瞬間も訪れる。 突然に、まるでくしゃみのように。貴方にも、あるでしょう? ――『特別な一日』(1977)より |