※このはなしには、筆者の想像に基づく脚色が施されています。
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時は1891年、舞台はデンマーク王国ユトランド半島のとある小さな村。貧しい農家の家に、元気な赤ちゃんの産声が響き渡りました。
赤ん坊の名はオーレ・キアク・クリスチャンセン。
貧しいクリスチャンセン家は、どんな家庭よりも幸せで、両親はたくさんの愛でオーレ・キアクを育てます。
『お金はないけれど、楽しく人生を送ってほしい』
そう願ったオーレ・キアクのお母さんは、我が子の成長を見守りながら、いつもこう囁き続けました。
「ライゴット、ライゴット・・・・・・」
「ライゴ~ット、ライゴットライゴット、ライゴ~ット」
大工、火事そして失業
すくすくと育ったオーレ・キアクは、大工としての訓練を受け、やがて自立し、1916年、デンマークのビルンに自分の木工所を持つようになりました。
数人の見習いと一緒に、地元の農家の人達のために家や家具を作りました。小さいながらも、地元民からの支持を受け、大切な奥さんとの間に小さな2人の息子も生まれました。子供達には手造りの木製おもちゃを与えます。
しかし、1924年、その2人の息子が木の削り屑に火をつけてしまいます。木工所はあえなく焼失。音を立てて崩れた木工所の灰の中、2人の息子は申し訳なさそうな表情でオーレ・キアクを見上げます。
『ここからさらに木工所を大きくするんだ』
めげずにそう決心したオーレ・キアクは、
しゃがみこみ、かつて母親から言い聞かせてもらったことを
自分の子供に向かっても囁くのです。
「ライゴット、ライゴット・・・・・・」
『ライゴォ~ット、ライライライ、ライゴォ~ット』
ところがその8年後の1932年、
世界恐慌の波がデンマークの片田舎にも押し寄せてきます。
事業は立ち行かなくなり、あえなく失業。
肩を落として途方に暮れていると、今はもう大きくなった息子達が寄り添い、
彼にこんな言葉をかけるのです。
「ライゴット、ライゴット・・・・・・」
ライゴット、それは「よく遊べ」という言葉。
色々あって、LEGOが生まれる
再度奮起して木工所を立て直し、オーレ・キアクは子供用の玩具を作り始めます。豚の貯金箱や車やトラック、幼児が引いて走り回れるおもちゃなんかを作りました。
ヨーヨーブームにあやかったり、家具の販売も調子良かったりして、木工所は順調に成長。
1934年、LEGOという名前の会社を立ち上げます。
お馴染みのデンマーク語『ライゴット』(Leg Godt)を見事にもじりました。今では息子のゴッドフレッドが事業を手伝います。
木製玩具を止めて、プラスチック製のブロックを作り始め・・・・・・
その後のレゴ社が辿った運命は、皆さんの良く知る通りです。
全世界で創造的な遊びを子供に提供する組み立てブロックLEGOは、
知らない人はいない人気の玩具会社へと成長し、今なお選び続けられるメーカーとなりました。
愛され続けるこのシンプルな玩具を支えるのは、
『よく遊べ』
という創業者オーレ・キアク・クリスチャンセンの心です。
オーレ・キアク・クリスチャンセンその人
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