冬も山場を越え、次々に花をつける植物を見るたびに、こんなに色があったのかと驚かされる毎日です。
ぽかぽかの昼もちらほら、無性に外に飛び出したくなる・・・老若男女、動植物みんな、春が近づくと落ち着きがなくなるのは世界共通ですが、日本人には、ある1つのとくべつな理由があります。
それは、花見――
つまり、桃色の花を咲かせた桜の木をじっと眺めたり、その下でひたすら飲んだり食べたり、ブルーシート敷いたり、SNSに自撮り画像を投稿したり、企業のさくらスイーツマーケティングを喜んで受け入れたりすること。
普段は大人しめな日本人が、春になったとたん桜の木に群がって騒ぐ光景は、日本を初めて訪れた海外の人には理解できず、驚きを隠せないようです。
しかし、そんな花見文化も海外に着々と勢力を広げつつあり、HANAMIの耐え難い魅力のとりこになっているようです・・・。
全米桜祭り――ワシントンンD.C.
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アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.では、1万本近い桜の木が春の訪れを知らせます。
桜は日米間の友好関係を育てるための象徴で、今では地元民や日本人観光客が多く訪れ、毎年3月の終わりごろには”全米桜祭り” (National Cherry Blossom Festival)の名の下に、花火や、寿司や、日本文化講義や、着物ファッションショーや格闘技やマラソンなど、とにかく何でも行われ、花見を理由に狂喜乱舞はアメリカでも基本です。
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1年廻れば再び咲くワシントンの桜ですが、それが当たり前の光景になるまでには100年以上の地道な活動が必要でした。
写真雑誌で有名なナショナルジオグラフィックの初女性理事エリザ・シドモアは、日本旅行の際に見た桜並木に深い感銘を受け、母国の首都にも桜並木を作ってはどうだろう、と提案。
それが1885年のことです。その後、24年間提案し続けますが聞き入れてもらえず、いったんは計画が闇に葬られたかのように思われました。
彼女1人の声は、1首都を動かすにはかすかでしたが、ある時、そんなかすかな声がひょんなことから大統領夫人の耳に入り、その噂が日本領事館まで届き、1909年、東京主導で2000本の桜の木の寄贈が決定したのです。
初めての寄贈は害虫を理由に上手く行かず、焼却処分、再計画、紆余曲折を経て、1911年、59種類合計3020本の日本の桜の木が、ワシントンD.C.に到着したのです。
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戦争と障害を乗り越えた桜並木を、ぜひワシントンを訪れた際には忘れずに御覧ください。
8月の桜祭り――サンパウロ
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日本の裏側、ブラジルのサンパウロでも花見は春の楽しみです。
日本では桜の代名詞になっているソメイヨシノは、サンパウロでは育ちにくいらしく、沖縄、雪割、ヒマラヤ、大島といった様々な種類の桜が約4100本、カルモ公園内には植えられています。
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サンパウロでの桜の見ごろは7月下旬から8月上旬にかけて。
3日間にわたって桜祭りが開催され、餃子、天ぷら、焼きそばなどを売る日本の夏祭りではお馴染みの屋台が軒を連ね、盆踊り、和太鼓、ラジオ体操も披露され、毎年2万人ほどが訪れるといいます。
元々は、70年代に、同市に暮らす日系人によって桜の木は植えられました。
それが今では4千本、遠く離れても祖国を想う、当時の人々の郷愁が今なお漂います。
サンパウロに立ち寄るなら、桜祭りに合わせて行かなきゃ損です。
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