『ピグノーズ7-100』を集める理由
まず、この『ピグノーズ7-100(通称:レッドラベル)』がどういうものなのかを簡単に紹介させてください。これは1972年~1982年の間にアメリカで製造されたポータブルギターアンプで、かの有名なエリック・クラプトンが『461 Ocean Boulevard』というアルバムの1曲目で、ピグノーズ7-100を使ってレコーディングしています。要するに、一流のギタリストがこの乾電池式のポータブルアンプの音に惚れ込んで、実際にアルバムのレコーディングに使ってしまったという伝説のアンプなんですよ。
僕は中学生の頃からエレキギターをはじめて、このアンプに憧れていたのですが、当時は35,000円という値段で、中学生の僕にはとても手が出せなかった。しかし、1985年から復刻版(ピグノーズ7-100 R)が発売されるようになり、2万円を切るぐらいの値段だったので買ってみました。生産がアメリカではなく香港になったから値段が安くなったんですね。音を聞いてみたら、復刻版もそれなりにいい音でした。そうするとやはり当時のオリジナルが欲しくなる…。そんなときに出会ったのがセカイモンでした。
豚の鼻”の形をしたボリューム兼スイッチがひとつだけの「ピグノーズ7-100」。
シリアルナンバーで見るアンプの変遷
シリアルナンバー3806(左)、5292のピグノーズ(右)。
落札したピグノーズ7-100を使っているうちに、今度はこのアンプの歴史に関心が出てきました。オリジナルのピグノーズは10年という製造期間の中で5万台ほど製造されているのですが、ピグノーズが誕生したいきさつだとか、復刻版が香港で作られるようになった理由だとか。とくに、細かい仕様が歴史の中でどう変わっていったか気になりだしてきて… そこで、これはおもしろそうだと思う年代のものをセカイモンで落札しはじめたんですよね。
セカイモンで商品画像を拡大するとシリアルナンバーがちゃんと見えて、製造年代の見当までおよそ自分でつけられるものがあります。そういう商品が出品されていたら、とりあえず数千番台区切りで買ってみようと。実際、ものすごい変遷があることがわかりましたね。ものすごいって言っても、ふつうの人は気にも留めないくらいの変化なんですけど(笑)。結果的に、僕の手元にはピグノーズ7-100が25台ぐらい集まってしまいました。
3,000番台と5,000番台の違い
電池ボックスの金属ヘリの有無、ジョーさんに教えてもらってわかりました。
ジャンク商品を修理するのも楽しい
僕は学生時代に楽器屋でアルバイトしていたこともあって、また電気の知識も若干はあるので、たまにピグノーズのジャンク商品を安く落札して、修理・再生もしています。もし直らなくても、部品を取って他のピグノーズの修理に使えますし。
実はアメリカ製のピグノーズのトランジスタはすべて日本製で、古い部品でも秋葉原とかで探せば見つかることがあるんです。ところが、復刻版のトランジスタはアメリカ製。オリジナルのピグノーズはセカイモンで探し、中身のトランジスタは秋葉原で買う。復刻版のピグノーズは日本で買い、トランジスタはセカイモンで探すという… ちょっとややこしいことをしています(笑)。
復刻版をどこまでオリジナルの音に近づけられるかという実験もしました。オリジナルのほうはゲルマニウムトランジスタを使っていて、ちょっとくぐもった音というか、やや影のある艶やかな音がするんです。たしかに、復刻版にゲルマニウムトランジスタを差し換えてみると、オリジナルに一歩近づいた音になりました。
学生時代に楽器屋でアルバイトをしていたというジョーさん、修理もお手のもの。
「留め置き」を使って関連商品もまとめて購入
セカイモンではピグノーズだけではなく、ピックアップやエフェクター、トランジスタなど他のギター関連商品も購入しています。「留め置きサービス」が始まってからは、ピグノーズと一緒に古い雑誌の切り抜きや広告なんかも落札して、ピグノーズの変遷を知るための資料として入手しています。ピグノーズの回路図とか、工場直売で大幅ディスカウントのダイレクトメールとかもあるんですよ。会社がはじめて経営危機に陥ったときのものですね… こういうものがセカイモンには出品されている。
ちなみに、この回路図は会社のスタンプが押してあるので、コピーじゃない、本物なんですよね。こんなの初めて見ましたよ。ただ、逆にこの回路図を見て、ちょっと間違っているんじゃないかと思いました。僕は、これを見るより前にピグノーズをバラして修理していたので、実際の回路となんか違うなと(笑)。
「留め置き」でまとめて配送ができなかったら、国際送料のほうが高くついてしまって、広告とか紙一枚のものは、欲しくても単独では買えないですから。買う側としては商品代金以外の経費はあまりかけたくない。小さくて軽いものの国際送料が安くなれば、もっと気軽に海外の商品が買えるようになると思います。
ピグノーズの回路図。右下には本物のスタンプ(社印)が押印されている。
セカイモンでは海外の“ふつう”の商品が手に入る
中学生の頃に憧れていたピグノーズを大人になって手に入れることができて嬉しいですね。そもそも、日本ではオリジナルのピグノーズなんてあまり流通していないんですよ。楽器屋でアルバイトをしていたときも、1~2回しか見たことがなかった。ヤフオクでも年に1回出るか出ないかじゃないですか? おそらく、一度オリジナルのピグノーズを手に入れた人は、なかなか手放したくないんでしょうね。
海外の高級品や一流品は国内での入手も容易ですが、いわゆる“ふつう”の商品が意外と手に入らない。世界にはまだまだ“ふつう”で“いい商品”がたくさんあるので、僕にとってはそういうのを探せるのがセカイモンのいいところですね。
たとえば、1960年代からたくさんのアメリカン・アンプに使用されたスピーカー『ジェンセン』の一部の機種や、チワワと呼ばれるくらい超小型の『プルトーンニウム』のワウペダルとか。これは落札当時、国内未発売でした。日本には入ってきていない、海外のいいものが手に入る。それが世界の門、「セカイモン」だと思うんですよね。
ジェンセンのスピーカー(左)とプルトーンニウムの超小型ワウペダル(右)。
編集部コメント
お客様インタビュー第三回は、『ピグノーズ7-100』をはじめギター関連商品を多数ご購入いただいているジョーさんにお話を伺いました。ピグノーズどころかギターについてもまったく無知な私たちでしたが、予想を上回るおしゃれなピグノーズの外観と、歴史や変遷までとことん追求するジョーさんの熱いお話で、ピグノーズの世界を楽しむことができました。
ピグノーズ7-100については、ジョーさんのホームページ『The JK Guitars』で詳しくご紹介されているのでぜひご覧ください。
また、ブログ『セカイモンの裏側』では、取材撮影のこぼれ話を綴っていますので、そちらもぜひご覧ください。
【 セカイモン編集部 森川・井澤 2015年6月25日 】